日本と世界各国の相続制度の違い

日本と世界各国の相続制度の違い
司法書士がアメリカ・ヨーロッパとの比較で解説

世界相続制度

相続制度は国ごとに大きく異なります。

日本では法定相続分や遺留分制度が強く機能していますが、アメリカやヨーロッパの一部では「遺言の自由」や「信託の活用」が大きな特徴となっています。

司法書士として日々相続業務に携わる立場から、日本と海外の制度の違いについて解説していきます。

 

日本の相続制度の基本

【法定相続分】

日本の相続制度は民法に基づき、法定相続人の順位と相続割合が明確に規定されています。

  • 配偶者は常に相続人
  • 第1順位:子(代襲相続あり)法定相続分:1/2
  • 第2順位:直系尊属(父母・祖父母)法定相続分:1/3
  • 第3順位:兄弟姉妹(甥姪まで代襲相続可)法定相続分:1/4

たとえば「配偶者と子」が相続人となる場合、配偶者は1/2、子は残りの1/2を均等に分けることになります。ただし、この規定は絶対ではなく、遺言や遺産分割協議により、法定相続分と異なる割合で相続することも可能です。

さらに、日本には遺留分制度があり、配偶者や子など一定の相続人には必ず最低限の取り分が保障されます。ただし、遺留分を実際に行使するかどうかは相続人本人の判断に委ねられます。

 

【相続税】

税制面では、相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人」とされています。相続人が一人であれば、3,600万円、二人であれば4,200万円となります。都市部や鎌倉のように地価が高い地域では、自宅不動産が遺産に含まれることで相続税申告が必要になるケースも少なくありません。

【相続登記】

2024年4月からは相続登記が義務化され、不動産を相続した方は、3年以内に登記を済ませる必要があります。

 
 
アメリカの相続制度の特徴

【遺言と信託の普及】

アメリカでは、遺言(Will)に加えてリビングトラスト(Living Trust)が広く利用されています。信託を活用することで、裁判所でのプロベート手続きを避け、スムーズに財産を承継できます。

【コミュニティ・プロパティ州】

カリフォルニア州やテキサス州など一部の州では「コミュニティ・プロパティ(夫婦共有財産制)」が採用され、婚姻中に得た財産はすべて夫婦の共有財産とされます。

【遺留分制度がない】

多くの州では遺留分制度が存在せず、遺言によって家族を排除することも可能です。ただし、配偶者には「Elective Share(選択持分)」を請求できる州もあります。

【相続税の仕組み】

アメリカの連邦相続税は基礎控除が約20億円と非常に高額であり、大多数の国民は課税対象外です。日本のように中間層まで広く課税される仕組みとは大きく異なります。

【裁判所でのプロベート手続き】

アメリカの相続における重要な手続きがプロベート(Probate)です。これは、裁判所が遺言の有効性を確認し、相続財産の債務清算や相続人への分配を監督する手続きです。日本の制度に例えるなら、限定承認に最も近いといえるでしょう。

<プロベート手続きの流れ>

  • 遺言の提出と有効性確認(署名や証人要件などを審査)
  • 裁判所による遺言執行者(Executor)または管理人(Administrator)の任命
  • 相続財産の調査と目録の作成
  • 債務・税金の支払い
  • 残余財産の分配と終了報告

<メリット>

  • 裁判所の関与により透明性と公平性が担保される
  • 遺言の有効性を公式に確認できる

<デメリット>

  • 手続きに数か月から数年かかることがある
  • 弁護士費用や裁判所費用が発生する
  • 公開記録となりプライバシーが守られにくい

こうした負担を避けるため、アメリカではリビングトラストや死亡時移転口座(TOD/POD口座)を利用し、プロベートを回避するのが一般的です。

 
 
ヨーロッパの相続制度(国別比較)

【フランス:強力な遺留分制度】

フランスでは遺留分(réserve héréditaire)が非常に強力です。子や配偶者には必ず一定の取り分が保障され、遺言による自由は大きく制限されます。

相続税の基礎控除額は、子一人あたり約1,700万円とされています。

【ドイツ:日本に近い仕組み】

ドイツも遺留分(Pflichtteil)制度を有しており、日本と似た制度設計です。ただし、遺留分をめぐる裁判が頻発しており、裁判所の関与が強いのが特徴です。

相続税の基礎控除額は、配偶者で約1.3億円、子で約6,900万円です。

【イギリス:自由度の高い制度】

イギリスには遺留分制度がなく、遺言の自由度が非常に高いのが特徴です。その一方で、扶養請求の制度により最低限の生活保障は考慮されています。信託制度も発達しており、柔軟な承継が可能です。

相続税の基礎控除額は、約6,500万円です。

 
 
各国の遺言と信託の活用度の違い
日本:法定相続分、遺産分割協議が中心。遺言、信託設定はまだ少数派、遺言書普及率3~4%
アメリカ:リビングトラスト(信託)が主流、遺言書普及率40~50%

フランス・ドイツ:遺言中心で、信託は限定的、遺言書普及率20~30%

イギリス:信託が広く活用され、柔軟な相続設計が可能、遺言書普及率50~60%
 
 
まとめ

日本、ドイツ、フランスは、遺留分によって、家族の権利を守る調和型、アメリカ、イギリスは遺言や信託により柔軟な財産承継が可能な自由型といえるでしょう。

日本では、江戸時代からの家督相続の影響もあり、遺言や信託制度は十分に普及していません。特に遺言書の作成率は、先進国の中では非常に低いのが現状です。

しかし、近年は、家族間の価値観の変化により相続トラブルが増加傾向にあります。平和な財産承継のため、相続対策をお考えの方は、お早めに司法書士などの専門家にご相談ください。

 

2025年9月

司法書士 日永田一憲

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司法書士・行政書士 
日永田一憲(ひえだかずのり)
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