司法書士の仕事とは

司法書士の仕事とは

司法書士になるには

司法書士になるには、まず司法書士試験に合格することが最初のステップです。この試験は、年に一度実施される国家資格試験であり、試験科目には、民法、商法、不動産登記法、商業登記法、民事訴訟法などが含まれます。

これらの法律知識をしっかり身につけ、さらに実際のケースに応じた問題解決能力が求められるため、かなり難易度は高いといえます。近年は、平均4%~5%程度の合格率(私が合格した平成19年は2.8%)となっており、多くの合格者は数年かけて受験勉強を継続します。

試験に合格した後は、司法書士としての登録手続きが必要です。都道府県ごとの司法書士会への登録を経て、初めて正式に業務を行うことが可能になります。

司法書士法第一条には、司法書士は、この法律の定めるところによりその業務とする登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。と規定されています。

 
 

司法書士の仕事①:不動産登記

不動産登記は、司法書士の業務の中でも重要な分野であり、専門的な知識と経験が求められます。不動産の売買や贈与、抵当権の設定など、さまざまな場面で登記が必要となります。

たとえば、住宅を購入した際、買主は所有権移転登記を行う必要があり、住宅ローンがある場合は加えて金融機関の抵当権設定登記が必要となります。これらの一連の業務は決済業務と呼ばれています。

この際、申請書類の作成や必要な情報の確認、法務局への登記申請といった手続きが発生しますが、これらの手続きを自分で行うのは非常に難しく、専門的な知識がないとトラブルが発生する可能性があります。そのため、司法書士が代理して登記手続きを進めることで、安心して不動産の取引をすることができます。

不動産登記の仕事は、不動産会社や銀行等の金融機関から依頼を受けることが多いです。

 

司法書士の仕事②:商業登記

商業登記もまた、司法書士の専門分野の一つです。会社や法人の設立、役員変更、増資、解散など企業の状態を、法務局へ登記することにより、会社の信頼性や透明性を確保する役割を担います。

たとえば、新しい会社を設立する場合、登記をすることにより、法的にその会社が存在することが証明され、取引先や金融機関との関係が円滑に進むようになります。また、役員変更、本社所在地の移転、増資や合併といった企業活動においても、商業登記を通じて会社の情報を最新の状態に保つ必要があります。司法書士は、これらの書類作成や申請手続きを代理し、企業の運営をスムーズに進めるためのサポートを行います。

商業登記の仕事は、企業や税理士からの依頼が多いです。

 

司法書士の仕事③:裁判業務

特別な研修を受け、認定試験に合格した司法書士は、簡易裁判所において訴訟代理人として活動することができます。これは、裁判業務における重要な役割の一つです。

また、裁判所に提出する書類の作成も重要な役割の一つです。具体的には、訴状や答弁書、準備書面など裁判に必要な書類を作成する業務があります。ほかにも、家庭裁判所への相続放棄申述書や成年後見人申立書の作成も司法書士の業務に含まれています。

裁判業務については、個人の方からの依頼が多いです。

 

司法書士の仕事④:成年後見

成年後見制度とは、高齢者や知的障がい者で判断能力が不十分な方を法的に支援する制度です。近年、司法書士が大きな役割を果たしている分野であり、具体的な業務には、不動産の管理、生活費の管理、医療費の支払い手続きや施設入所契約の代理などが含まれます。

後見人に選任される専門職の中では司法書士が約37パーセント、弁護士が27パーセント、社会福祉士が18パーセントと、司法書士が最も多くなっています。

成年後見の仕事は、地域包括支援センターや介護施設からの相談、司法書士の成年後見団体「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」経由の相談からはじまることが多いです。

 

司法書士の仕事⑤:相続

相続手続きは、司法書士の業務の中でも非常に重要な分野です。相続が発生すると、まず相続人を確定し、遺産分割協議を経て相続登記や遺産の承継手続きを行う必要があります。特に不動産が相続財産に含まれる場合、その不動産の所有者を変更するための法務局での相続登記が必要です。司法書士は、遺産分割協議書の作成や登記手続きを代理し、相続手続きを円滑に進める役割を果たします。

さらに、相続手続きには不動産に加え、預貯金や株式などの金融資産の承継も含まれます。司法書士は、これらの資産についても、相続人からの依頼を受け遺産承継業務を行うことができます。たとえば、預貯金の解約や分配、証券会社での株式の移管手続きなどの業務が含まれます。

また、遺言がある場合には、遺言執行者としての役割も司法書士が担うことができます。遺言執行は、相続人間のトラブルを防ぎ、スムーズな相続を実現するために非常に重要な業務です。

相続手続き業務については、個人の方、税理士などからの相談が多いです。

 

実は多種多様な司法書士の仕事

かつて、昭和平成の時代は、司法書士の業務は不動産登記を中心としたものでした。不動産の売買に関する登記手続きを代理することをメインの仕事とする司法書士が大半を占めていましたが、現代ではその業務の幅は大きく広がっています。不動産登記だけでなく、相続、裁判、成年後見業務など、それぞれの得意分野を持つ司法書士が、様々な場面で活躍しています。

現代社会では、個人のライフステージや状況に応じた法的サポートが求められており、司法書士は、身近な法律の専門家として、相続、遺言、後見、家族信託など多様な法的ニーズに対応しています。今後も、司法書士の業務はますます多様化していくと予想されます。

司法書士 日永田一憲

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日永田一憲(ひえだかずのり)
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