認知症対策としての家族信託

将来の備えとして認知症対策が必要な理由

家族信託

日本の65歳以上の人口は年々増加しており、当事務所のある鎌倉市では65歳以上の人口が全体の3割を超えています。厚生労働省の調査によると、認知症の高齢者は、近い将来、約700万人に達すると予想されています。これは高齢者の5人に1人が認知症になる計算です。

認知症になると、自分自身で財産を管理したり、契約を結ぶことが困難になります。その結果、預貯金を引き出したり、不動産を売却したりすることができず、日常生活や老後の生活設計にも支障をきたす可能性が考えられます。

さらに、本人の財産を守るために「成年後見制度」を利用するという選択肢もありますが、実際には手続きが煩雑であり、柔軟な対応が難しいという課題があります。そうした背景の中で、自由度の高い「家族信託」が認知症対策として注目されています。

 

家族信託とは?認知症になる前に準備する新しい方法

家族信託とは、自分の財産を信頼できる家族(たとえばお子さん)に託し、指定した目的に沿って管理や運用を行ってもらう仕組みです。たとえば、高齢の親が自宅や預金などの財産を子どもに信託することで、将来的に本人が認知症になっても、子どもがその財産を使って介護費用を支払ったり、必要に応じて不動産を売却したりすることが可能になります。

家族信託は、「委託者(財産の持ち主)」「受託者(財産を管理する人)」「受益者(利益を受ける人)」の三者関係で成り立っています。信託の契約内容は、遺言や任意後見に比べると、自由度が高く設計でき、たとえば「本人が亡くなった後は孫に財産を引き継ぐ」といった指定も可能です。このように、家族信託は認知症に備えるだけでなく、相続対策としても効果的な手段となります。

 
認知症発症後では家族信託はできない

家族信託は、あくまで契約に基づく制度であるため、契約時に本人が「判断能力」を有していることが前提です。つまり、すでに認知症を発症してしまっていた場合には、家族信託契約を締結することができません。公正証書で作成する際、公証役場では、判断能力の低下が明らかであるときは、作成を断られることもあります。

そのため、「まだ元気だから」と先送りにするのではなく、判断能力がしっかりしているうちに、早めに対策を講じることが重要です。将来の備えとして、早い段階から家族や司法書士などの専門家と一緒に家族信託の活用を検討しておくことが、安心につながります。

 
成年後見制度との違いと家族信託のメリット

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人を保護するための制度です。家庭裁判所に申し立てて後見人を選任してもらい、本人に代わって財産管理などを行います。ただし、成年後見制度には以下のような制約があります。

  • 後見人は裁判所が選任するので、家族以外が後見人になる可能性がある
  • 毎年、家庭裁判所に報告義務がある
  • 不動産の売却には、原則として、裁判所の許可が必要

これに対して家族信託は、契約内容に従って柔軟に財産を管理・運用できるのが大きな特徴です。たとえば、受託者が本人(委託者)に代わってアパートの家賃管理や修繕を行うこともできますし、タイミングを見て不動産を売却することも可能です。裁判所の監督を受けずに運用できる分、スピーディな対応ができるのも大きなメリットです。

 
家族信託の手続きと専門家の役割

家族信託契約を締結するには、有効な信託契約書を作成し、必要に応じて不動産の登記などを申請する必要があります。一般の方がすべてご自身で手続きを行うのは非常に難しいのが実情です。

その際に重要となるのが、司法書士や弁護士など、専門家のサポートです。司法書士や弁護士は、法律の専門家であり、信託契約の内容について法的な視点からチェックし、後々トラブルが起きないように設計することができます。

また、親から子へ不動産の管理権限を信託する場合、受託者への名義変更登記が必要になります。このような専門的な手続きは、司法書士に依頼することで安心して進めることができます。

 
家族信託が有効なケースとは?

家族信託は、以下のようなケースで特に有効です。

  • 高齢の親が不動産を所有しており、将来的には売却する必要がある 
  • 賃貸物件の管理を高齢の親が続けていけるか不安
  • 介護費用の負担などで子どもに迷惑をかけたくない
  • 子どもに障がいがあり、長期的な財産管理が必要
  • 二次相続まで考えた相続設計をしておきたい

このように、家族信託は、認知症対策や財産管理などさまざまな状況に対応できる制度です。将来のリスクを見据えて、早い段階から備えておくことで、家族の負担を大きく減らすことができます。

 
まとめ:家族信託で不安のない老後を

自分がいつ認知症になってしまうかは本人にも分かりません。認知症は、徐々に進行することもあれば、突然やってくることもあります。

そして、認知症になってしまった後では、家族信託契約を締結することはできません。成年後見制度にも限界がある中で、柔軟な生活設計ができる家族信託は、非常に有効な認知症対策といえます。

必要な手続きはやや複雑ですが、司法書士や弁護士などの専門家のサポートを受けることで安心して進めることができます。

「将来の不安に備えたい」「家族に迷惑をかけたくない」「財産を自分の意志で使ってもらいたい」と考える方にとって、家族信託は強い味方となる制度です。

まずは信頼できる司法書士や弁護士などに相談し、将来の安心に向けた第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

 

2025年4月

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