勝って兜の緒を締めよ、北条氏綱の遺言

北条氏綱の遺言

戦国初期、後北条氏の2代目当主として南関東を平定した北条氏綱。

彼は戦国大名のハシリ、北条早雲の嫡男であり、後北条氏の全盛期を築いた北条氏康の父親です。

関東の領国支配を正当化するため、氏綱の代から鎌倉幕府執権の「北条」を名乗ったといわれています。

今回は、その氏綱が嫡男・氏康へ残した「遺言」についてご紹介しましょう。

 

■後北条氏2代目当主・北条氏綱とは

相模国の小田原城に本拠地を置いた北条氏綱は、早雲を初代とする後北条氏の2代目当主。有名な父と3代目の間で若干地味な印象があるかもしれませんが、次のような顕著な実績を持つ武将です。

  • 東海の一部、南関東のほとんどを勢力下に置いた
  • 父・早雲の代まで続いた豪族による連合体制型から後北条氏への権力集中型へと変更
  • 代替わり検地を発案・実行、家臣団と領民を統制し、子や兄弟で優秀な家臣団を組織
  • 印を用いて公式文書の強化を図り、代官による不正申告などを排除
  • 評定衆・奉行衆を設置して有能な人材を登用しやすい組織作りの実施
  • 戦乱で焼けた鎌倉鶴岡八幡宮の再建に着手

当時、群雄割拠の関東で武田氏、今川氏、山内上杉氏、扇谷上杉氏、古河公方、小弓公方、里見氏など多くの敵と戦い抜いて領土拡大に成功し、嫡男・氏康へとしっかり継承させた文武とも非常に優秀な戦国大名です。

 

■氏綱の死と後北条氏を巡る状況

ただ、氏綱が優秀であっても激戦エリアにいた後北条氏を取り巻く関東管領の上杉家や今川家、武田家との関係は、油断できない状況にありました。

そんな中、ついに氏綱は病に倒れてしまいます。

心配事は、いささか小心者だった息子の氏康の当主としての器量のこと。

そこで、氏綱は5箇条の訓戒状を用意し、それを遺言としたのです。

1541年7月19日、北条氏綱は亡くなりました。

享年55。

 

■氏綱の遺言

氏綱が嫡男の氏康に残したのは5箇条から成る「北条氏綱公御書置」という政治ノウハウを伝えるものでした。

実は、氏綱自身も父親の北条早雲から家督を譲られる時に、21箇条の遺訓を受けており、それを忠実に守って後北条氏を発展させた経緯がありました。

以下に要約した氏綱の遺言状をご紹介します。

【勝って兜の緒を締めよ「北条氏綱公御書置」の要約】

  1. 大将から侍にいたるまで、義を大事にすること。義に違えて国を切り取っても後世の恥辱を受けるだろう。義理を重んじよ。
  2. 侍から農民にいたるまで、全てを慈しめ。捨てるような人など存在しない。
  3. 驕らずへつらうな。身の程をわきまえよ。分相応の振る舞いをすべし。
  4. 倹約を心がけること。
  5. いつも勝利していると、驕りが生まれ、敵を侮ったり、不行儀なことがあるので注意せよ。勝って兜の緒を締めよ。

「北条氏」の名を関東に轟かせた北条氏綱の強さの秘訣は、戦いに勝っても慢心せず、気持ちを引き締める「勝って兜の緒を締めよ」の精神に裏打ちされるものだったのでしょう。

この言葉は、のちに日露戦争における日本海海戦で完勝し、英雄視された東郷平八郎が引用したことでも知られています。

 

■遺言を受けた嫡男・北条氏康とその後

若い頃には、父氏綱から武将としての器量を心配された氏康でしたが、実に逞しい戦国武将へと成長しました。

戦に強く、伊豆・相模・武蔵・上野を領有。

今川氏、武田氏とは同盟を結び、後北条氏の全盛期を築きました。

文武に秀で、同時代の人々にも高く評価された第3代当主・北条氏康は、19年間の領国経営ののち、隠居後にも後継者・北条氏政と12年間の共同統治を続けて30年以上も後北条氏を率いたのです。氏綱から氏康への相続は大成功といえるでしょう。

そんな氏康の心にはいつも父親の5箇条があったに違いありません。

北条早雲の業績を守り、それを着実に強化・拡大した堅実な北条氏綱の思想。

その考えが有名な遺言となり、後北条氏の最盛期を支える基礎となったのです。

氏綱、氏康の個々の能力が秀でていたのは勿論ですが、氏綱から氏康への事業承継の成功には「遺言」を含めた相続対策が大きな役割を果たしたことに異論はないでしょう。

 

2021年1月

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