相続人が一人もいない、特別縁故者への相続財産分与

特別縁故者財産分与

【特別縁故者】

亡くなった方に相続人が一人もいない場合、その財産は、最終的には国庫に帰属することになります。

ただし、一定の要件をみたし、かつ、所定の手続を行えば、亡くなった方と特別の縁故があった者(特別縁故者)が、遺産の一部ないし全部を取得できることがあります。

特別縁故者への相続財産分与の申立ては、年間で1196件(平成30年度司法統計)であり、それほど多く行われている手続きではありません。

特別縁故者については、民法958条の3に規定があり、

①被相続人と生計を同じくしていた者

②被相続人の療養看護に努めた者

③その他被相続人と特別の縁故があった者

と定められています。では、どのような人が「特別縁故者」として認められるのか、

①被相続人と生計を同じくしていた者

一緒に暮らしていた内縁の配偶者や事実上の養子などが該当します。

②被相続人の療養看護に努めた者

被相続人を献身的に看護したり介護したりした人が該当します。ただし、仕事として看護や介護を行っていた人は該当しません。

③その他被相続人と特別の縁故があった者

被相続人との間に密接な関係があった人で、その人に財産を分与することが被相続人の意思に合致するであろうと思われる人が該当します(①②に比べ、分かりにくい)。

そこで、よく問題となるのは、③の「被相続人と特別の縁故があった者」に該当するかどうかです。以下に、特別の特別縁故者に関する裁判例をいくつか紹介いたします。

【認められた例】

申立人 義理の姪
生前の状況

被相続人と頻繁に交流があった

被相続人が申立人夫婦をわが子のようにかわいがっていた

認められた額 総額1億4000万円のうち、500万円
申立人 従姉妹
生前の状況

自宅の鍵を預かり被相続人の家事を手伝っていた

被相続人夫婦の介護を行っていた

認められた額 総額1億4000万円のうち、2500万円
申立人 従兄弟
生前の状況

被相続人が引きこもり状態で定期的に安否確認

住居の建物修理や害虫駆除を行っていた

認められた額 総額3億7000万円のうち、300万円

【認められなかった例】

申立人 内縁の夫
生前の状況 被相続人と一緒に暮らしていた
死後の状況 自分に遺贈するとの遺言書を偽造した
申立人 従兄弟の養子
生前の状況 本家、分家としての親戚付き合いがあった
死後の状況

被相続人の葬儀を執り行った

遺骨を引き取り、供養を行っている

このように、特別縁故者と認められるかどうか、またその金額についても、判例によってかなり異なっています。

特別縁故者への相続財産分与が認められるには、被相続人の療養看護に尽くしたこと、被相続人と頻繁に交流があったこと等についての証拠が重要になります。

具体的には、介護費用や医療費の負担、介護のための交通費の負担等の領収書や訪問時の写真等できるだけ証拠を収集することが大切になります。

お、被相続人の葬儀や法要を行ったことは、被相続人との生前における関係ではなくいわゆる死後の縁故であるから、特別縁故者の要件には該当しないとの判断は共通していると考えられます。

 

【申立の手順】

特別縁故者として被相続人の財産を受け取るまでには、次のような手続きが必要になります。

1. 相続財産管理人の選任申立て

相続人がいない場合、まず、最初に相続財産管理人の選任を申し立てをします

2. 相続財産管理人の選任

裁判所が相続財産管理人を選任します

3. 相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告・催告

相続管理人選任の公告から2ヶ月が経過したら、相続財産管理人は、相続財産の債権者・受遺者を確認するための公告を行います

4. 相続人捜索の公告

3の公告から2ヶ月が経過したら、家庭裁判所は、相続財産管理人の申立てにより、相続人を捜すため、6か月以上の期間を定めて公告を行います

5. 相続人の不存在が確定

4の公告の期間満了までに相続人が現れなければ、相続人不存在が確定します

6. 特別縁故者に対する相続財産分与の申立て

相続人不存在が確定してから3ヶ月以内に、特別縁故者に対する財産分与の申立てを行います

7. 特別縁故者の認定

申立人が特別縁故者に該当するかどうか、被相続人の財産をどのように分与するかについて、家庭裁判所が判断します

【特別縁故者・まとめ】

以上のように、特別縁故者として認定されるまでには、手続きが複雑なうえに相当な時間もかかってしまいます。また、特別縁故者として認められるかどうかも分かりませんし、認められたとしても全額が認められるとは限りません。

相続人が一人もいないという場合には、遺言書を作成し、財産の譲り先を定めておくと安心です。

 

2020年3月

司法書士 日永田一憲

 

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