相続手続きにおける戸籍の取得

相続手続きにおいて、まず必要になってくる書類が戸籍です。

そこで今回は、戸籍やその取得方法について、説明いたします。

■戸籍とは?

戸籍とは、本籍地や家族関係などを証明するものです。

戸籍には、その人の本籍地、生年月日、婚姻日、死亡日、両親の名前、子供の名前などが記載されています。

■戸籍の種類

戸籍には種類があります。謄本(とうほん)と抄本(しょうほん)です。

謄本とは、その戸籍に載っている全部(全員)の情報を記載したもので、全部事項証明書ともいいます。

それに対し、抄本とは、その戸籍に載っている情報のうち、一部(一人)について記載されたもので、個人事項証明書ともいわれるものです。

相続手続きにおいては、抄本でも足りるものもありますが、被相続人と相続人との関係などを証明することが目的となるので、一部についての情報で は足りないため、全て謄本で取得した方が良いでしょう。

したがって、ここでは謄本を取得するということを基本とします。

■戸籍の名称

一口に戸籍と言っても、その状態や状況によって名称が変わってきます。

その呼び名は大きく分けて、戸籍(現在戸籍)、改製原戸籍、除籍とあり、これらはすべて戸籍です。

つまり、戸籍と言った場合、一般的には現在戸籍を指すことが多いですが、改製原戸籍や除籍などの古いものについても含まれるわけです。

■除籍

話をわかりやすくするために、ここに箱があり、その箱の中に人が入っているとします。

その箱が戸籍で、箱に入っている人がその戸籍に載っている人だと思ってください。

例えば、箱に入っている方が、結婚したり、亡くなってしまったり、本籍地を変更したりしたとします。

そうすると、その方は箱から出されます。

これを「除籍」になると言い、その方が箱の中でいたところにも除籍と記されます。

そして、箱の中の方が全員除籍になった場合、箱自体が除籍となります。

これがいわゆる「除籍謄本」です。

ここで注意が必要なのは、箱から出されることも、箱自体が「空」になった場合も「除籍」という言葉を使うことです。

戸籍の請求をする際にも、混乱しがちなところなので、これについては次回のコラムでお話しします

■改製原戸籍

次に「改製原戸籍」についてです。

例えば、民法の改正により、戸籍の記載事項が変更になったり、それまで手書きで書かれていたものが電子化され印字のものに変更されたり、それまで縦書きであったものが横書きに変更されるなど戸籍の記載方法などが法律によって変更されることがあります。

明治時代に戸籍制度ができてから、現在まで、4~5回変更されました。

上記の例でいうと、箱の形が法律で変更されることがあると思ってください。

そうすると、箱に入っていた方は、新しい箱に移動され、この新しい箱が現在戸籍となります。

ただし、箱が新しくなる際、移動されるのは除籍になっていない方だけで、古い箱に記載されていた情報なども新しい箱には移動されません。

したがって、古い箱の時に結婚して除籍になった方の情報などは新しい箱には移動されないことになります。古い箱では4人入っていても、新しい箱 には3人しか入っていないことがあるということです。

そして、改製原戸籍とはこの古い箱のことを言います。

つまり、法改正等にによって改製される前の戸籍というわけです。

さて、ここまでまずは戸籍の基本的なことについての説明いたしました。

請求する際にも、戸籍自体のことがわからないと訳が分からなくなってしまいますからね。

次回は、戸籍の取得方法について説明いたします。

2014年7月

司法書士 日永田一憲

戸籍謄本

相続手続きにおける戸籍の取得 その2

前回は、「そもそも戸籍とは何か」ということについてお話しいたしました。

今回は、その続きで、戸籍の取得方法について説明いたします。

■出生から死亡までの戸籍が必要な理由

相続手続きにおいては、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要となります。

それは、相続人を確定させるためです(ほかに相続人がいないか確かめる)。

法律で定められている法定相続人は、配偶者は常に相続人となりますが、その他の相続人は、被相続人の子・孫(第1順位)、被相続人の父母・祖父母(第2順位)、被相続人の兄弟姉妹・甥姪(第3順位)となっています。

第1順位の方がいない場合第2順位の方へ、第2順位の方がいない場合第3順位の方へとなり、また同順位の中でも子がいなければ孫、父母がいなければ祖父母、兄弟姉妹がいなければ甥姪と、被相続人に近い方が相続人となります(ここでいう「いない」とは、もともと存在しない場合だけでなく先に死亡している場合も含みます)。

簡単に説明すると、配偶者以外の相続人になる順番は、被相続人から見て、

子・孫(第1順位)→親・祖父母(第2順位)→兄弟・甥姪(第3順位)

となります。

つまり、相続人を確定させるためには、第1順位の方から順番にその存在や現在の状況を把握、確認し、証明しなければなりません。

そのため、被相続人の家族関係が記載されている戸籍が必要となるわけです。

そして、前回お話ししたように、戸籍が改製されると従前の戸籍で除籍された方の情報が記載されないため、例えば、離婚歴があり前妻との間に子がいる場合や認知した子がいる場合など、現在の戸籍ではわからないことがあるので、被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要になるということです。

戸籍を提出する機関(法務局や金融機関)によっては、「子供ができる年齢くらいまであれば十分」と認識しているところもありますが、出生までの戸籍がないと受付けてくれない機関もありますので、念のため出生の記載のある戸籍まで取得しておいた方が良いでしょう。

■戸籍の取得方法

生まれてから亡くなるまでの戸籍を取得するには、死亡時から出生にさかのぼって行います。

被相続人の以前の本籍地については相続人の方が分からないことがあるため、死亡時の本籍地の記載のある戸籍から出生へさかのぼって行うことが一番効率的です。

また、本籍地自体が不明の場合は、最後の住所地で住民票の除票を本籍地付きで取得すれば、本籍地は判明します。

実際に戸籍を取得するためには、その請求を本籍地のある区役所・市役所などの役所に申請します。なお、戸籍の請求は郵送でも可能です。

その際、戸籍係の方に「出生までの戸籍が必要です」と伝えると、被相続人についてその役所で保管されている年代の古い戸籍(改製原や除籍)も取得することができます。

ただし、転籍などで本籍地が変更になっている場合など、請求する役所が変わる場合は、新たにその本籍地の管轄となる役所に請求することが必要です。

取得の請求をする申請書については、各自治体によって書式が異なりますので、各役所のホームページなどからダウンロードするのが良いでしょう。役所によっては、委任状まで掲載されています。

今回は戸籍の請求について説明しましたが、戸籍を請求する際には、戸籍に何が書かれているか内容を理解することが必要となります。

そこで次回は、相続手続きにおける戸籍の取得の最後のコラムとして、戸籍取得の際に必要な戸籍の読み方について説明いたします。

2014年8月

相続手続きにおける戸籍の取得 その3

今回は、相続手続きにおける戸籍の取得についてのコラムの続きで、実際に戸籍を取得する際の手順についてお話しします。

死亡時からさかのぼって戸籍を取得することを前提に、その順に沿って進めたいと思います。

■戸籍を出生までさかのぼって取得する手順

戸籍は、本籍地のある市役所や区役所などの役所に保管されています。

これは、除籍や改製原戸籍についても同じです。

ですので、前回のコラムでお話ししたように、戸籍を取得する際に「出生まで全て必要」と伝えていただければ、そこの役所で保管されている戸籍、除籍、改製原戸籍の全てを取得することができます。

そして、戸籍の取得はまず、被相続人の除籍を取得するのですが、これは、被相続人の最後の本籍地のある役所に請求します。

■本籍地が不明なときは住民票の除票から

必ずしも住所地と本籍地は同じ場所とは限らないということもあり、被相続人の最後の本籍地がわからないという方は、被相続人の最後の住所地のある役所で被相続人の住民票の除票を取得しましょう。

これは、被相続人の最後の本籍地を知るためなので、本籍地の記載のあるものを請求するようにしてください。

戸籍を請求する場合、申請書に本籍地を正確に記載することを求められます。そこで、住民票の除票によって被相続人の最後の本籍地を確認するわけです。

住民票の除票を取得したら、そこに記載されている被相続人の本籍地のある役所に請求します。

除票に記載されている本籍地の戸籍を請求すると、被相続人の亡くなった記載のある戸籍を取得することができます。これは除籍になっています。

ただし、前のコラムでお話ししたように、除籍謄本であるか、現在戸籍上で除籍となっているかは、戸籍の状態によって変わってきます。

■出生までの戸籍を取得

請求する際には、亡くなった記載のある戸籍に限らず出生までの戸籍がどのような状態になっているかわからないため、念のため戸籍、除籍、改製原戸籍の全てを請求するようにしましょう。

大概のケースの場合、出生までの戸籍を請求すると、1度の請求で戸籍を1通だけでなく複数通取得することになると思います

戸籍を取得したら、その戸籍のうちの一番古い戸籍を確認してみてください。その戸籍が被相続人の生年月日より先に作成されていれば出生までの戸籍の取得ができたことになります。

もし、被相続人の生年月日より後に作成されているものであれば、その戸籍より以前の戸籍を取得し、生年月日より先に作成されている戸籍を取得するまで請求を続けます。

そして、この作業を繰り返し行っていくことで、出生までの戸籍を取得していくわけです。

しかし、この「生年月日より先に作成されている戸籍」については注意点がありますので、戸籍の取得の際に必要な戸籍の読み方と合わせて次回のコラムで説明いたします。

2014年9月

相続手続きにおける戸籍の取得 その4

今回は、相続手続きにおける戸籍の取得についての最後のコラムとして、実際に戸籍を取得する際に最低限必要な戸籍の読み方について説明いたします。

■戸籍の読み方

前回のコラムで、生年月日より先に作成された戸籍まで取得するとお話ししましたが、では、戸籍のどこを見ればその戸籍の作成日がわかるのでしょう。

まず、戸籍は昭和23年を境にその記載方法が大きく変わりました。昭和23年以前の相続は、家督相続制度でした。

家督相続とは、次に戸主となるものが単独相続するという制度です。つまり、簡単にいってしまうと、子や兄弟の人数に関係なく、戸主となるもの(主に長男)が家の財産すべてを引き継ぐということです。

そのため、昭和23年以前は戸籍の記載方法も、「母」「姉」「弟」等というように戸主を中心に記載されていました。

また、昭和23年以前の新たな戸籍の編製理由は、主に戸主の死亡や隠居による家督相続や分家であり、婚姻による新たな戸籍の編製ということはなかったため、「叔父」「叔母」「甥」「姪」までの記載があることも珍しくありません。

その後昭和22年の民法の改正により家督相続制度が廃止され、それに伴い昭和23年に戸籍法の改正も行われ、その記載方法が現在のように「一つの夫婦、及びこれと氏を同じくする子」となりました。

このように、相続制度の変更により昭和23年を境に戸籍の記載方法が大きく異なるため、戸籍の取得の際にも注意が必要です。

それでは、昭和23年以前と以後の戸籍の基本的な見方をそれぞれ分けて説明いたします。。

【昭和23年以前の戸籍・家督相続制度】

戸主の欄を確認します。戸主の欄に「~に因り家督相続〇年△月日受附」「~分家届出○年△月□日受附」という記載があります。その日付がその戸籍の作成日となります。

【昭和23年以後の戸籍・現在の制度】

その戸籍が作成された年代によって多少違いがあるのですが、たいていの場合戸籍の最初のほうに記載してあります。

戸籍の最初に、「~につき〇年△月日本戸籍編製」「~から転籍・・・〇年△月日受附」というようにその戸籍が作成された理由とともに日付が書かれています。その日付がその戸籍の作成日です。

■注意点

ここで注意が必要なことがあります。仮に、作成日が被相続人の生年月日より先だったとしても、被相続人がその戸籍に途中から入籍していたような場合は、さらに取得を続けなければいけないということです。

例えば、被相続人が女性の方で婚姻により夫の戸籍に入籍したような場合です。その場合、被相続人の方の欄に「〇年△月日※※と婚姻により~番(番地)・・・戸籍より(送付)入籍」との記載があります。

これは、その日付にその戸籍に入籍したということであり、その戸籍に記載のある被相続人に関することはその日付以降のものしかないということです。

つまり、仮に作成日が生年月日より前だったとしても、出生まで取得できたことにはならないということです。そのため、その入籍日より前の戸籍を取得しないといけません。

上記の例だと、「~」の部分に記載されている本籍地が転籍される前の本籍地で、「・・・」の部分には転籍される前の戸籍の筆頭者(戸主)の方の名前が記載されていますので、そこの本籍地のある役所へ請求することになります。

なお、戸籍、除籍、改製原戸籍を見極めるポイントとして、その戸籍の最後のページの欄外(一番下か左端)に、

「これは、戸籍に記録されている事項の全部を証明した書面である」

「この謄本は~の原本に相違ないことをを証する」

などと記載されています。 前者であれば戸籍、後者であれば「~」の部分に除籍や原戸籍と記載がありますので、その書いてあるものとなります。

以上、ここまで戸籍の取得、読み方について説明してきました。

■取得の手順

  1. 被相続人の住民票の除票を取得(被相続人の最後の本籍地を確認)
  2. 被相続人の最後の本籍地のある役所へ戸籍を請求(出生までさかのぼって請求)↓
  3. 作成日が生年月日より 作成日が生年月日より後、前であれば取得完了 もしくは途中から入籍(入籍日→作成日の順に確認)
  4. 作成日が生年月日より前のものを取得するまで請求

■まとめ

これまで、相続における戸籍の取得などについて説明してきました。

正直、戸籍の取得というのは、単純そうに見えて意外と面倒な部分もあります。

相続の形式が兄弟相続や代襲相続となるとなおさらです。

戸籍の収集が途中で嫌になってご依頼いただくというケースも少なくありません。

ですので、ご自分で戸籍の取得を考えられている方はもちろんのこと、当方へのご依頼をお考えの方にも、手続終了の際に戸籍をお渡ししているので、それをご確認される際の参考になればとコラムにしてみました。

ここまで、ポイントとなるようなことをお話ししてきましたが、何より大事なことは、戸籍に書かれていることをできるだけ読むということです。

もちろん、用語がわからない等難しい部分もあると思いますが、なるべく隅々まで目を通してみる、そうするとなんとなくでも書かれていることがわかってくると思います。

機会があれば、是非一度、戸籍とじっくりにらめっこしてみてください。

相続手続だけでなく、被相続人の方やご先祖様のことに思いを馳せる素晴らしい時間になると思います。

2014年11月

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代表者
司法書士・行政書士 
日永田一憲(ひえだかずのり)
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