相続人は奥様とお子さんがお一人。お子さんはご主人との関係が悪く、長年、絶縁状態にありました。

お子さんにご主人の訃報を伝えると、お子さんは父親の相続には関わりたくないとすぐに相続放棄を決意し、奥様には相談せずに、裁判所へ相続放棄申述の手続きをしました。

相続放棄の結果、相続人はご主人の兄弟姉妹や甥姪8名にまで拡大し、相続関係は一気に複雑化しました。

新しく相続人になった方の中には、奥様が一度も会ったことがない方や名前も知らないような方もおりました。

このような事態は奥様にとって全く予想外で、さらに不安を抱えることになってしまいました。

奥様が心配していたのは、ご主人の遺産の大部分が自宅不動産で、現預金が限られている中、他の相続人に法定相続分を支払うと預貯金が底をついてしまうかもしれないということでした。

今後の生活資金が確保できるかどうかは、奥様にとって重大な問題でした。

当事務所は、奥様の不安を少しでも和らげるため、迅速に対応しました。

まず、奥様の日々の生活費を確保するため、取引のある銀行に遺産分割前の預貯金の払い戻し手続きを案内し、奥様が日常生活を問題なく送れるようサポートしました。

また、相続人である兄弟姉妹や甥姪8名に対して、相続手続きの説明を行い、奥様の厳しい状況を理解していただくために、詳細な情報提供と事務連絡を重ねました。

特に、遠方に住む高齢の相続人には、何度も繰り返し説明し、その方の親族にも協力をお願いしました。

結果的に、すべての相続人が奥様の置かれた状況を理解し、快く協力してくださったことは、奥様にとって大きな救いとなりました。

最終的には、不動産の名義変更手続きや預貯金の解約も無事に完了し、奥様は安心して生活を続けられるようになりました。

奥様からは、「本当にありがとう、助かりました、感謝しています」との言葉をいただきました。

私たちもこの言葉に心を打たれ、これまでの努力が報われた思いで胸がいっぱいになりました。

今回のケースは、複雑な相続関係にもかかわらず、すべての相続人の理解と協力を得て、奥様が再び安心して生活を送れるようサポートできたことが、当事務所にとっても大きな喜びとなりました。

私たち、司法書士の仕事は、お客様に寄り添い、支えになることであると改めて実感できた事例でした。